経営指針・10年ビジョン

大阪府中小企業家同友会2022年度の方針は「『ビジョン2020』を実践し、すべての会員が経営指針に基づく自社経営をすすめ、中小企業の力で元気な大阪を創ろう!」です。月刊誌では「ビジョン2020」と経営指針の実践をテーマに企画をすすめています。

vol.5  特集:「 経営指針・10年ビジョンって何?ビジョン2020との関連は?」

ビジョン実現に向け、 会社を発展・成長

あの人に聞く

(株)今井広告研究所 取締役
今井 亮
(大阪東ブロック/京阪支部/2019年度入会)

PROFILE
所 在 地:大阪市城東区関目
URL:https://imai-next.com
設  立:1958年10月
年  商: 5,000万円(2021年) 
社 員 数: 9名
業務内容:
DTP事業部 / グラフィックデザイン・印刷物全般
WEB事業部 / HP制作・動画制作・システム開発
ワイデクル事業部 / 情報管理の商品開発・販売〈(株)山田製作所共同事業〉
スタジオサンカクルーフ / 撮影レンタルスタジオ運営
メイキットキッズ / 子ども向けイベント用商品の制作・販売

 経営理念

私たちは広告メディアを通じて世界の人々を結ぶ懸け橋となりお客様と共に発展・成長します。

ナイキから今井広告研究所へ

今井広告研究所に入るまではナイキジャパンで直営店のストアマネージャーをしていた今井さんは、店舗の運営管理とともにブランド理念やビジョンをスタッフに伝えることをミッションとし有意義に働いていました。今井広告研究所は義叔母が社長をし、妻(社長のめい)がそこで働いていました。2018年の初め、今井広告研究所に退職者が出ること、また社長が一人で切り盛りしていて経営的に大変なことを妻から聞きました。それなら自分がなんとかしたいとの思いが芽生えた今井さん。当時は富山県に単身赴任しており「家族」と一緒に過ごす大切さを考えていることも重なったので、社長に相談をして今井広告研究所に入社することになりました。ナイキのマネージャーをしていたこともあり、そのスキルを活かせば今井広告研究所をもっと発展させられると自信満々でした。

自分の思いとのギャップ

現在の今井広告研究所の構成は、4代目の代表取締役社長今井知子さん(しろきた支部・本部情報化・広報部)、取締役の今井亮さん、30年間今井広告研究所を支えている超ベテランデザイナーの3名が取締役で、6名の社員、合計9名の会社です。社員のうち3名が在宅で働いています。会社の経営は社長の肌感覚で決済を行うスタイルで、いい意味で家族的な経営です。勤めていたナイキではすべてがシステマチックで、そのような経営をしていきたいと思っていた今井亮さんとの思いとは真逆のような感じでした。入社したての今井さんのミッションは営業でした。どんどんと攻めるように営業をしていきますが、印刷のことやWEBの知識がなく、案件を持ち帰っては社員に教えてもらい日々勉強を重ねつつ月日が流れていきました。ある程度の業界的知識を理解するまでに2年以上はかかったそうです。この業界の技術進歩は早く、今も常に追いかけて勉強をしているとのことです。営業マンとして日々東奔西走していましたが、2年ほど前から、ようやく取締役として経営に目が向くようになりました。そのきっかけが経営指針確立・実践セミナーでした。

経営指針確立・実践セミナー受講

今井広告研究所の同友会歴は長く、2代目社長時代の専務取締役が同友会に所属していました。現社長の今井知子さんも同友会青年部の出身で、現在はしろきた支部で活躍しています。その関係で今井亮さんも2019年4月に同友会に入会しました。現社長の青年部時代の仲間であり、顧客でもある会員から「亮(あきら)君もそろそろ指針セミナー受けなあかんで」と言われ受講しました。指針セミナーは数字や経営のスキルを学ぶ場と思っていたのですが、同友会の指針セミナーはまったく違い、経営者としての覚悟、理念・ビジョンの重要性、方針、数値計画、行動計画を学ぶ場でした。これは前職のナイキで言っていたことに近いような気がしました。しかし、そんなに甘くはなくビジョンが描けない。そんな状態なので、方針計画も作りはしたもののすっきりしない状態での卒業になりました。

ビジョンが少しずつ見えてきた

いまひとつ納得のいかない指針セミナー卒業だったので、現在も東ブロックの経営委員会に入り、助言者として現在も指針セミナーに参加しています。助言者としての運営は行いつつも、どちらかといえば受講者目線で自社の指針を考える場としています。結果を出している経営者たちに揉まれていくうちに自分なりのビジョンが見えてきました。それはシンプルに年商を今の5倍にすることでした。指針セミナーで言う10年ビジョンとは少し違いますが、実現に向けた方針が決まりはじめ、社内からは行動計画が自然発生するようになってきました。この動きを指針書として成文化することが自分の役割だと考えています。これを続けていくと10年ビジョンが明確にイメージできるのではないかと感じているそうです。

具体的行動の一つ「UV転写」

UV転写に関しては以前から導入していましたが、なかなか実績が上がらない状態でした。そこで、いろいろなものに転写したサンプル画像をサイトに掲載するなどの方法でPR。徐々に知名度が上がり、反響が得られるようになってきました。この事業を一つの柱として育てていくために、展示会への出展も積極的に行っています。昨年まではワイデクル事業部として共同事業社の(株)山田製作所と共同出展していましたが、今年からはUV印刷転写加工で単独出展にチャレンジしています。7月の九州で出展した際には、数件の案件を受注し手応えを感じています。どこにでも印刷転写ができるUV転写と、今井広告研究所のデザイン力を合わせた技術を事業の柱として今後も伸ばしていけると確信しています。

2012年障全交のスローガンに共鳴

話は10年前にさかのぼります。同友会を知ったのは2012年「障害者問題全国交流会in大阪」にゲスト参加したのがきっかけでした。そのころは起業より6年がたち、利用者さんは順調に増えていましたが、スタッフが増え続け運転資金にも困り果てた状態で、自分に限界を感じていたそうです。熱心な誘いを受け参加してみました。そのときのスローガンが「障害者と健常者が共に生き、働ける社会づくりへ」です。身体中を電気が通り抜けるような衝撃を受け、心の底から共鳴しました。経営者の会でこんなことを取り上げていることにも感動し、すぐに入会を決意しました。東大阪東支部(現在東大阪第二支部)は製造業が多く、女性経営者はほとんどいない支部で会話が進まないと思ったとき、これまでいかに狭い社会にいたのか愕然とし、自分が企業家と話ができないでどうする、それでは製造業を勉強してみようと思ったそうです。


■ ヘルメットのような立体物に印刷が可能

家族的経営から企業へ

このように現在自分の思い通りに動けるのは、これまで現社長が作り上げてきた自由な会社の風土があるからこそだと思っています。しかし、今井広告研究所は家族的会社から企業への転換期であり、これを変えていくのは自分の役目だと今井さんは感じています。企業への転換に向け、新卒の採用、それに伴う就業規則の再整備など、やるべきことは山のようにあります。これまで築き上げてきた今井広告研究所らしさを活かしながら、家族的な経営から企業へと変化していく、今後が楽しみな会社です。
(取材:情報化・広報部山田文:山田)

2030年みんながもっと笑う会社をめざして

あの人に聞く

福井精機工業(株) 代表取締役
清水 一蔵
(大阪中央ブロック/臨港支部/2016年度入会)

PROFILE
所 在 地:大阪市大正区鶴町
URL:http://www.fukuiseikikogyo.co.jp
創業/設立:1964年4月/1985年2月
資本金:1,000万円
年 商:4億3,000万円(2021年度)
社 員 数: 35名
業務内容:射出成形金型の開発・提案 (試作型 / 簡易型 / 量産型)/小ロット生産/CiBs(固形潤滑剤)の開発・生産

会社の沿革

福井精機工業株式会社は、プラスチック製品用の精密金型製造をメインにしています。先代が大正区三軒家にて山下工作所として創業、1985年に福井精機工業株式会社として設立し、2003年に現在の場所に移転しました。清水さんは大学卒業後、京都の金型メーカーに就職し、その後広告業界に入るなど、紆余曲折ののちに2013年に先代からの誘いで同社に入社、2018年に事業を承継して代表取締役に就任しました。

業務について

同社は、世の中のあらゆる製品の回転部に使用される部品であるベアリングの樹脂リテーナー用金型、自動車のトルクセンサーやオイルポンプなどの機構部品用の金型の製造をしています。先代の時から大手自動車部品製造会社ともつながりがあり、さらに技術力を認められ感謝状をいただいたり、公式サプライヤーとして認められたりするなど、長年培ってきた技術力を強みに業績を伸ばしてきました。清水さんが入社してから5年間で機械の投資や人員の採用にも積極的に取り組み、また顧客先に仕事が増えたことでさらに売上は倍増。利益も順調に上がりました。しかし、2020年のコロナ禍で売上は約35%ダウン、社員も少し減りました。足元はまだ不安定ですが、来年にかけて明るい兆しが見えてきました。

開発メーカーとしての発展

2010年からの10年間で世界が大きく変わり、ビジネスモデルも変わってきました。この先10年後にはさらに大きな変化が起きるのではないか、そして同社の業界でも例外なく「価値の変化」が起こると思われます。今までは設備投資と職人技で「製造する/できる」ところに価値がありました。しかし、デジタルの進歩とともに工作機械や品質保証に関する考え方など大きく変化しています。今まで通り「製造する」だけではこれからは生き残ることはできない。金型メーカーとして元々持っていた技術力に加え、営業・企画・解析・設計力も含めたトータル管理力を武器に、素早く製品を実現するところが重要であり、そこに価値があると清水さんは考えています。時代の変化に沿った自社の変化を考え、そのためのノウハウを蓄積することに力を入れています。

時代の変化にマッチした事業を

CiBs(キッブス)という「油が染み出すプラスチック」を開発しました。UHMWPEという特殊な樹脂(プラスチック)に油を混ぜ込み固めた成形品は50%が油分でできています。昨今は感染症の拡大や人件費高騰、またAI・ロボットの進化で、産業の自動化や省人化への関心がとても高いです。自動化は進む一方、機械は物理的に擦れるところや可動するところには必ず摩擦が起き、そこには給脂やグリスアップなどのメンテナンスが必要です。一部では人が行うなど完全な自動化にはなりません。しかし、50%が油分でできたCiBs(キッブス)を部品として組み込むと、自動的に油が染み出すのでメンテナンスに変化が起こります。製品化してまだ2年なので認知度としては低いですが、5年間ノーメンテナンスで動くロボット内部の潤滑用ギアとして大手ロボットメーカーに量産採用されています。さまざまな試作を続け、今後は宇宙開発事業などにもアピールしたいと考えており、宇宙関係の展示会にも出展予定とのことです。

人とのコミュニケーションが最重要

清水さんは自社のビジョンを叶えるために、人とのコミュニケーションが一番大切だと考えています。社員さんは職人気質の人間が多く、どちらかといえば話をするのは苦手なタイプが多いそうです。そんな社員さんたちとコミュニケーションを取るきっかけとして、社内報を作ったり、グループワークを開催したり、バーベキューや忘年会などの交流会も開催しています。こういった業務ではない部分を重要視しています。

未来の見える化

カリスマ性を持って経営をしてきた先代からバトンタッチした時に「社員たちは不安を抱えているのではないか?」と考え、福井精機工業のめざす未来を成文化し社員たちに示しました。そして、2020年に新たに「Mission、Vision、Value」を掲げ「人を模した『i』に福が来るように、人にささえられ皆が笑顔になるように」という思いを込めてロゴを作り変えました。同時に、同じ会社の仲間である全社員に名刺を作りました。名刺を使う機会のない社員さんは名札代わりとして使用しているそうです。

 Mission

私たちは新しい「価値」を追求し、すべての人に「笑顔」を提供します。

 Vision

最高の製品を生み出すために、最高に頼られる存在であること。

 Mission

私たちの熱意と誠意は、お客様からの信頼へつながる。

2030年にかける思い

最後に清水さんはこう語ってくれました。「人として一番の幸せは[笑う]ことだと思っています。そこが自社の一番の目的です。人生最後の時に『いい人生だった、笑顔で大切な家族と幸せに一緒に過ごすことができた』と思えることが一番の幸せだと思っています。そして、その目的を叶えるために会社としてしっかりと利益を出し続けることを[目標]にしています。そして、戦略・作戦・個々の戦術を考え、具体的な内容で実行していく。みんながもっと充実して仕事ができるようにさまざまな取り組みを行っています」「まだまだ足りないところはありますが、とにかく僕はみんなに笑ってもらいたい。そんな会社を作りたい」と話す清水さんの笑顔が印象的でした。人とのコミュニケーションが最重要未来の見える化2030年にかける思い(取材:大西・北川・谷澤文・写真:谷澤)

【深化の扉】
取材をしてようやく真の課題が見え、会員の人となりを知る。広報部員の冥利に尽きる役得かも。 学びを深める扉を開けてみると、自身の課題とも重なっていく。

経営指針の実践で本気でめざしたいビジョンが見えてくる


経営指針確立・実践セミナーを終え10年ビジョンを掲げている企業はたくさんあると思います。しかし、ビジョンに向け大きく進んでいく、実現させている企業と、目の前の課題に追われ「こうなればいいな」というビジョンになっている企業があるのも事実です。これは、10年ビジョン実現にむけて経営実践をするかどうかで変わってくるのではと思います。実践し、うまくいかない、また大きな課題が表れる。それの繰り返しで本当にめざすべきビジョンが見えてくるのではないかと思います。それを社内全体に対して明確に「見える化」することが大切だと改めて感じられた9月号でした。本気でめざしたい10年ビジョンを見つけるために、もう一度ビジョン2020を読み返し自社の10年ビジョンを考えてみてはどうでしょうか?(情報化・広報部山田)

vol.4  特集:「 経営指針・10年ビジョンって何?ビジョン2020との関連は?」

発達障害の方々と地域がつながりあうそんな社会に生きていきたい

あの人に聞く

NPO法人発達障害サポートセンターピュア 理事長
檜尾 めぐみ
(中河内ブロック/東大阪第二支部/2012年度入会)

PROFILE
所 在 地:大阪府東大阪市御厨南2丁目
URL:https://pure-higashiosaka.com
設  立:2006年6月 東大阪発達障害支援の会ピュアとして法人格を取得
社名変更:2011年12月 特定非営利活動法人 発達障害サポートセンターピュアに変更
年  商: 1億9,300万円(2021年3月期)
社 員 数: 42名(正社員16名 非常勤26名)
業務内容:発達障害に特化したサポートセンターとして、乳幼児期から学齢期、成人期にわたり寄り添い、自立に必要なスキル学習、就労支援および生活支援事業を業務とします。

施設のご案内

梅雨明けの午後、東大阪御厨に檜尾さんを訪問しました。白壁がまぶしいばかりの4階建てのビルの正面玄関には幾種類もの植栽が施され、緑の中に集うカフェテラスのような雰囲気です。法人設立のころから多様に拡大してきた支援事業を1カ所に集中して営める場所がほしいと思ってきた、その夢がかなって竣工したのは2018年9月です。1階には児童発達支援、放課後デイサービス、東大阪発達障害相談支援センター、メインダイニングルーム、事務室などが設置されています。2階は就労継続支援B型の業務。3階は生活介護、4階はショートステイ、ダイニングサンになっています。乳幼児から成人まで途切れることのないサポートをめざした施設がここに誕生しました。

ひたすら事業計画をすすめてきた日々

起業時は事業所をマンションの1室から始めて、利用者さんのニーズに応えるよう業務内容を増やしてきました。十分な支援活動をするために、広く全体の動きが見える施設がどうしても必要になったなど、現在の施設建設の理由を話してくれました。ただ優しく安全に支援するだけでなく専門の知識を持ってスキルアップにつなげたいと考えてきました。檜尾さんの長男が自閉症という障害をもって生まれてきたことで、壮絶な子育てを経験したと言います。今28歳ですが、成長当時自閉症に関する情報は皆無でした。母として自ら勉強していくことを始めました。同じ悩みを持った親の会を作り、それは最初3人から100人を超えたこともありました。みんな地域から孤立していたことから「安心して自閉症の子どもたちを遊ばせる居場所を作ろう!」と提案し、東大阪市の障害福祉課に相談。2006年より法律の改正でNPO法人でも障害福祉サービス業の認可が下りることとなり、6月に法人格を取得。続いて8月業務の認可が下り、東大阪発達障害支援の会ピュアの活動がスタートしました。


■ Welcomeボードの前にて

研修と資格に基づく支援と東大阪市の福祉行政

自閉症の支援技術を持つ専門医を探すことが難しい状況において、檜尾さんは自ら勉強して自閉症スペクトラム支援士の資格を取りました。この学問はアメリカのデラウェア州とノースカロライナ州で生まれたそうで、あるとき思い立ち施設に見学に行きました。その後は日本自閉症スペクトラム学会において、自閉症をテーマとして身近に感じた要望される支援を学会で発表してきました。そして特筆すべきは東大阪市の行政とスクラムを組んだことです。相談支援専門員となり発達障害児(者)支援システム構築プロジェクトのモデルケースとなって10年余り、市の福祉行政と福祉計画になくてはならない存在になっていきました。

地域とのつながりを築くための苦悩の連続

法人設立10年目に新施設計画を立案し、直ちに行動に移したものの、まず土地の確保に苦労しました。総建築費の予算は3億円。土地までは買えないので定期借地権50年の設定で地主さんとの交渉に入ります。施設を建設するにあたって近隣の住民や商業施設に対して了解を求める時には、思いがけない抵抗にあいました。反対意見、強烈なバッシング「障害者は来ないでくれ、土地の値段が下がる」などです。経営指針書の開示やビジョンを語り、一人ひとり丁寧に説明していきました。最終的にその場を取り持ってくれたのは自治会長さんです。「この土地がお役に立つのなら」と地主さんの応援の言葉も聞かれるようになりました。2021年度の利用者実績は総利用者が130人。学齢期の児童が80人、18歳以上の成人期の方が50人です。相談件数は日々増えていき、2カ月お待ちいただいている方もいるそうです。


■ 北川

夢へ向けての資金調達

「主婦からの起業で、若いときはただ事務員でキャリアを持ったこともない、そんな私が3億円の契約に押印することを考えると手が震えて夜眠れなかった…」と檜尾さん。そこに大きな救いの手が差し伸べられます。何か公的資金を受けられるのではないかとの助言で東大阪市に相談し、長い間の行政との活動実績が実を結びました。これだけの収容人数の施設であり、東大阪市の福祉計画に合致すること、専門の知識、資格を持ったスタッフによる運営と、自閉症スペクトラムの支援技術分野で著名な医師の協力を得られるなどの条件がそろい、国庫補助金1億6千万円の取り付けが決定しました。残り多額の借金を返済する覚悟を担うのは、同友会経営指針成文化セミナー(受講当時の名称)において真っすぐに、その指導の通り、スタッフとともに作った経営指針書でした。

2012年障全交のスローガンに共鳴

話は10年前にさかのぼります。同友会を知ったのは2012年「障害者問題全国交流会in大阪」にゲスト参加したのがきっかけでした。そのころは起業より6年がたち、利用者さんは順調に増えていましたが、スタッフが増え続け運転資金にも困り果てた状態で、自分に限界を感じていたそうです。熱心な誘いを受け参加してみました。そのときのスローガンが「障害者と健常者が共に生き、働ける社会づくりへ」です。身体中を電気が通り抜けるような衝撃を受け、心の底から共鳴しました。経営者の会でこんなことを取り上げていることにも感動し、すぐに入会を決意しました。東大阪東支部(現在東大阪第二支部)は製造業が多く、女性経営者はほとんどいない支部で会話が進まないと思ったとき、これまでいかに狭い社会にいたのか愕然とし、自分が企業家と話ができないでどうする、それでは製造業を勉強してみようと思ったそうです。


■ 音頭

イラストにかいた夢の実現の真っ只中

ぜひ皆様にこの法人のホームページを開いて見てほしいと思います。そこでは子どもたちがいきいきと学ぶ姿、支援するスタッフの喜びや、支援技術の専門的な詳細が伝えられています。幼児期から成年期まで切れ目なく一人ひとりに合わせたプログラムが提供されています。ほぼ完成に近いと思われるこうしたシステムは、誰が考え実現してきたのかを問いました。スタッフの思いもよらない提案、自己実現として夢に描いてきた具体的な将来像を、1枚のイラストにしてみんなで共有しました。ライフステージとなる新施設の周りに学校、農園レストラン、グルーブホーム、クリニックが描かれています。檜尾さんはスタッフと共に考え歩むこと、自分自身の仕事はスタッフの夢を実現することだとみんなに伝えました。しかしその結果、温度差を感じた退職者を出すことにも…。

次のステージへ羽ばたいて

新型コロナウイルスが広がった2020年、2021年度も夢の実現への歩みは止まりません。全員で知恵を出し合い解決策を図り、予算と実績の進捗を確認しました。壮大な計画を着実にすすめ10年ビジョンに描かれた事業所が2022年8月1日奈良県明日香村に誕生しました。石舞台、山の辺の道で有名な明日香村、村まるごと博物館とも言える歴史的風致地区明日香村でなくてはならなかったのはなぜかを熱い思いで語ります。日本の原風景の中にこの事業所があること、それはただの田舎ではなくブランド化された所で、星野リゾートもやってくるらしいこと。就労継続支援B型と生活介護の施設とし、農業を中心とした作業を行います。高齢化する農家の課題を障害者が解決。農業を第一次産業から第六次産業に変えること。そして給付費に頼らない収益を確保したいという計画です。ここでの土地の確保はさらに難しく、地主さんの先祖代々所有しているという誇りは高く、手放すことにちゅうちょされましたが、建築を依頼した地元に三代続く工務店さんが尽力してくれました。壮大な構想は銀行から社会課題解決の取り組みと事業性評価の高さが認められ、1億円の投資計画は融資契約に結び付きました。夢を現実に置き換えていく檜尾さんの強さは、純粋に感動したことや学んだことを追いかけていく歩みにあるのでしょうか。(取材:情報化・広報部音頭、北川、文・写真:西岡)

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