コラム・あの人に聞く


〜 強靱な企業づくりをすすめる会員の取り組み 〜
月刊誌特集 I では、会内外で活躍する会員を毎回紹介します。会員の経営する企業の取り組みや、経営者である会員自身の企業経営に対しての考え方などを知ってもらうことで、同友会が目指す企業像、経営者像、そして中小企業と社会との関わりへの理解を深めてもらえることを期待しています。第19回は、大阪同友会 副代表理事の中本久美氏です。

インターフォワードシステムズ社長時代の悩み
 主人が1999年に創業した(株)インターフォワードシステムズへ、2004年10月に入社しました。2005年の暮れに、ベンチャー企業の事業サイクルは10年だと考えていた主人から「5年計画で事業承継をしよう」と話がありました。そのころは知識も経験も少ないこともあり、悩みましたが主人がいなくなるわけでもないので「一緒にやっていけばいいか」と引き受けることにしました。
 5年後の事業承継に向けて「どうせ継ぐなら、次世代の社員に継ぎたいと思ってもらえるような魅力ある企業づくりに取り組んでいこう」と思い、財務内容や株、社員や事業拡大のことなど、さまざまな後継者向けのセミナーや勉強会に参加するとともに、同友会会員の中小企業診断士の方に依頼し、事業承継の勉強会を5年かけて行いました。
 通関士の資格も取得し、2010年4月に事業承継をしました。
就任時に、自分の任期は10年と決め、次に承継してほしい幹部社員3人に候補を絞り「将来はこの3人の誰かが社長となり、2人が支えるような体制にしたい」と説明しました。ありがたいことに3名とも快諾してくれ、他幹部を含めた10人を中心に「この会社をみんなで盛り上げよう」と理念、方針、計画を一緒にたてて経営をしてきました。
 幸い、順調に規模も大きくなり社員数も47名に増えました。また、経営するにおいてこだわってきた社員の中に占める通関士の比率も58%と上昇しました。しかし通関業の仕事は、輸入の際にお客様の荷物の関税と消費税を立て替えないと輸入の許可が得られないので、事業を拡大すればするほど、運転資金として銀行からの借り入れが拡大します。そのため、サービス業として創業して大きな資産のないわが社にとって、次世代への承継には銀行への借入金を今後どのようにしていくのかがネックとなっていました。

M&A の誘いを受けて
 2013年5月に、とある銀行のM&A推進室から「面談にてお伝えしたいことがある」と封書が届きました。主人と相談し、まず会うだけ会ってみようと思い面談することにしました。
 話を聞くと丸紅(株)からの買収の話でした。全国の主要港や空港へ広がった営業網や、通関士を多く社員として抱えた組織経営が評価されたとのことで、やるやらないの決断はしないまま話を前にすすめることにしました。創業者である主人は、自分が立ち上げた会社が評価されたことそのものがうれしかったようです。
 M&Aに関しては、同友会の中でもマイナスな意見を言われたこともありました。実行の直前まで中立の立場ですすめていましたが、自分たちがするべき仕事や、やりがい、誇りは変わらず持ち続けることができるし、周りの風景やメンバーが変わったとしても、専門職をやり抜けるという事実は変わりません。社員の雇用を100%守るという条件や、交渉をすすめる中で、我が社が大切にしてきたインターフォワードシステムズの文化・社風である行動理念「適正、迅速、元気やる気」に共感を持ってくれたことですすめていく覚悟ができました。そして、一番の気がかりだった「社員たちは本当に納得してくれるのか」という部分も、全社員と個別面談をすすめる中で承継候補の一人と話をした時に「いろいろと不安に思うことはあると思うが3年後、5年後、10年後には、きっとみんな良かったと言ってもらえると思う」と言ってもらえたことで心を決めました。
 2014年12月にM&Aを実行し、条件の1つであった私の3年後の退任までの間に残念ながら退社した社員も数名いますが、現在もインターフォワードシステムズ時代の独自の朝礼が残り、当時の社風を残したまま皆元気に頑張ってくれています。

(株)シージェイエルでの取り組み
 話はさかのぼりますが、インターフォワードシステムズの社長就任時に、すべてのお客様へごあいさつに行きました。その中で四国の石材メーカーへ訪問したときに「関東では複数の石材加工業者の石材貨物を混載で輸送する専門業者はあるけれども、関西にはなく、ぜひそういうサービスを構築してほしい」という声を受け、中国福建省厦門の物流業者、石材メーカーと協議を重ね、共同で2012年に創業いたしました。
 このころは中国から送られてきた荷物を受け取るというような業務をしていました。特に営業するわけでもなく、赤字も続いていたので廃業するか悩んでいましたが、インターフォワードシステムズの代表退任時に、親の介護をしながら続けられる仕事として、この会社を再建することを決意し、2016年4月からリスタートしました。実は墓石を主に扱うこともあり、事業の将来性も含めて業務内容にあまり良いイメージを持っていなかったのですが、実際に動き出してみると石材の取り扱いへのニーズも高く、やりがいのある仕事だと感じました。
 現在は、石材に特化していますが、前社で培った経験と協力会社との連携で「これを持ってくるのはどうしたらいいのだろう」といったお悩みに対し、海外との架け橋となりさまざまな国からあらゆる輸入のコーディネートをさせていただけるようになれればと考えています。
同友会での企業づくりについて
 同友会の活動で無駄なことは1つもありません。経営指針、求人、社員教育、労働環境の整備、就業規則の策定など、自分のアンテナに反応したことは、ほぼすべて真似をしてきました。その中で当然ながらうまくいったこともいかなかったこともあります。大切なのは、うまくいかなかったことを「なぜダメだったのか?」「どうすれば自社にあてはまるのか?」を社員とともに考えてアレンジし、諦めずチャレンジし続けることだと思います。
 当初は経営指針も「専務がやりたいだけでしょ?」という冷ややかな反応でしたが、小さいことを積み重ねていくうちにお客様から「会社の雰囲気がよくなったね」などのいい声が社員に届くようになりました。外部からの評価が上がることで意識がだんだん変わり社員たちも育っていきました。そして、信じてやってきたことが企業としての価値をあげ、一つの結果としてM&Aとなりました。重要なことは小さなことの積み重ねが企業づくりであり、その取り組みが自社の社員の幸せにつながると信じることだと思います。
(取材:情報化・広報部 大西、大山、荒田、文:谷澤)
〜取材を終えて〜
 13歳で四国から出てきた祖父から丁稚奉公の辛さ、独立の覚悟、戦災ですべてを失くしてからの再起の厳しさを聞いてきた。父からはその精神を受け継がねばならないという重圧と自分のやりたいこととの葛藤を聞いてきた。会社は二人にとって心血を注いで守り抜いた子どものような存在だった。こんな思いを継いだ僕は、同友会で「会社は誰のもの」という問いかけに、疑いもなく「祖父や父や僕の」と答えていた。それから10年以上。多くの経営者の仲間と語り合いながら、そうではないことに気づいた。祖父から苦労や喜びを共にした社員の話を聞いていたことも思い出した。
 経営者や社員が持つ「会社は誰のもの」の答えが不一致だと事業承継に悪影響を与える。社員と共にやりがいのある会社を作ることが、今の僕がやるべきことだと再確認する取材になった。
(文:情報化・広報部大山、写真:田村)

Profile

企業名:株式会社シージェイエル
会員名:取締役 中本久美
所在地:大阪市港区弁天
創  業:2012年
資 本 金:500万円
売上高:17,417千円(2017年度見込み)
業務内容:石材の輸出入および販売、輸出入のコンサルティングおよび代行

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